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徳島地方裁判所 昭和23年(行)30号 判決

原告 富本平三郎

被告 徳島県農地委員会

一、主  文

別紙目録記載の土地につき古宮村農地委員会の樹立した牧野買收計画に対する原告の訴願につき被告会が昭和二十三年七月二日爲した棄却の裁決を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告は主文同旨の判決を求め、その請求原因として、訴外古宮村農地委員会は原告所有別紙目録記載物件に対し自作農創設特別措置法第四十條の二所定牧野買收計画を樹立したので、原告はこれに対し異議申立をなし同委員会の却下決定に対し被告会に訴願に及んだところ、同会は昭和二十三年七月二日原告の訴願を棄却する旨の裁決を爲した。然しながら右行政処分は次の理由によつて違法である。

第一、本件土地は自作農創設法によつて買收される牧野に該当しない。即ち同法第二條による牧野とは家畜の放牧又は採草の目的に供される土地であつて、その主たる目的が農地並びに植林その他家畜の放牧及び採草以外にあるものを除外するものと解すべきものであるが、本訴山林は植林を主な目的とするものである。本訴山林は大正七年四月二十九日原告が訴外緒方莊平より買受けたもので、当時杉檜その他雜木が生育していたが、原告は昭和十三年一月二十二日同地上の杉檜(約四十年生)その他の雜木を訴外竹内弘に金六千円で賣却し、同人がこれを伐採した後直に杉檜を植林し、旱天の爲樹苗の一部が枯死したため、更に二回にわたり補植し、これら樹木は現在大きいものは二間、小さいものは約四、五尺となつている。

第二、本件土地は小作牧野に該当しない。古宮村住民がここで採草を爲していたとしても、それは樹木の生育の妨害となる下草の採取を許していたのに過ぎないのであつて、採草地としてこれを賃貸又は使用貸借していたものではない。

右の理由によつて訴外古宮村農地委員会の樹立した原買收計画は違法であり、これを認容した被告会の裁決処分は違法としてこれの取消を求めるため本訴に及んだ次第である。と述べた。(立証省略)

被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め、答弁として、訴外古宮村農地委員会が原告所有請求趣旨記載土地に対し自作農創設特別措置法第四十條の二により不在地主所有の採草牧野として買收計画を樹立し、被告会が昭和二十三年七月二日原告の右買收計画に関する訴願につき棄却の裁決を爲したことはこれを認めるが、その余の請求原因事実を否認する。本件土地は植林としての生育状態惡く、他方採草地として好適である。又その管理人谷某が約十年前より現在の小作人九名に採草の目的で賃貸したものであつて、その賃料は各小作人が右谷某に労力を提供することによつて支拂に替えているものである。仮りに小作牧野でないとしても法第四十二條の二による買收に違法はないと述べた。(立証省略)

三、理  由

被告会が訴外古宮村農地委員会の原告所有別紙目録記載山林に対する自作農創設特別措置法第四十條の二による牧野買收計画に関する原告の訴願につき昭和二十三年七月二日棄却の裁決を爲したことは当事者間に爭がない。当裁判所が眞正に成立したと認める甲号各証に証人谷タメ、竹内弘、青山繁市、中元與八(青山証人については後記措信しない部分を除く)の各証言を綜合すれば、原告は昭和十三年頃本訴地上の杉檜立木四十年生位を訴外竹内弘に賣却伐採し、次で昭和十六、七年頃杉苗を植付けたが、その間原告は本訴土地の管理を訴外谷タメに委任してあつたところ、杉等の植林はその下草の除却を爲しその手入を施さねばならないので、訴外谷タメは原告の管理人として村民数名に本訴山林を区劃しそれぞれ採草せしめたが、右は植林の手入を主たる目的とするものであつて、右村民数名に本訴土地を賃貸又は使用貸借した形跡はこれを認めることができない。右認定事実と檢証の結果とを綜合すれば、本訴土地に施された杉植林の生育状況は必ずしも良好とは認められないが、それは全山殆ど雜草や灌木の茂るにまかせて手入不充分のためと看取され、曾て杉檜の植林地であつた事実に鑑みるときは敢て植林不適地と認めるに由なく牧野と断定することはできない。右認定に反する証人青山繁市の証言は採用しない。右の通りであるから本訴山林を小作牧野として或は又不在地主の牧野として買收手続をすることは、自作農創設特別措置法第四十條の二同法第二條の趣旨に反し違法の処分というべく原告の本訴請求を理由あるものとして認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 今谷健一 松永恒雄 赤塔政夫)

(目録省略)

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